昇圧回路をつくってプラズマボールを光らせてみた
このブログについて
こんにちは。まなおと言います。工業大学の電気電子工学科の学生をやっています。(やってました)このブログでは自作した電子工作の作品の作り方の備忘録のように使っていきたいと思っています。工作に限らず、いろんなことも書きたいと思っています。
僕は電子工作およびプログラミング初心者なので,お手柔らかにお願いします。
目的
今回のターゲットはこれ!
プラズマボール PBL40U−01 日本製: 発光・受光デバイス関連 秋月電子通商 電子部品 ネット通販
12 V印加するとプラズマが光る。すごそう(正直な感想)。12 VのACアダプターで動かせそうだけど,今回は昇圧回路を作ってみたいなと思ったのでUSB給電(5 V)でプラズマボールを光らせようと思います。
昇圧回路
昇圧回路ですが,昇圧チョッパという回路を使います。
chopperと呼ばれる回路の一つなのです。chopって切り刻むって意味があるみたいですね。直流電源Vin,インダクタ,半導体スイッチ,ダイオード,キャパシタ,抵抗で構成されています。
ざっくり言うとスイッチのON-OFF繰り返すことで任意の昇圧された電圧が出るっていう回路です。Vin < Vout になるんです。すごそう(小並感)。
Mode 1 : スイッチオン時
ダイオードか,スイッチか,電流iは流れたいほうに流れていくけどスイッチオンしたら短絡みたいなもん(偏見)だからスイッチへ。この時インダクタにエネルギーが蓄積されていくぞ!
Mode 2 : スイッチオフ時
インダクタに蓄えられたエネルギーが負荷へ放出!エネルギーが流入されていくのでその分Voutが増えていきます。
オンとオフの比率によって昇圧する電圧を変えることができます。やったぜ。
NJM2360
NJM2360は昇圧,降圧,インバータ回路が組めるDCDCコンバータICです。
新日本無線さんが出していらっしゃいます。
◆ データシート NJM2360_J.pdf
◆ NJM2360/A アプリケーションノート NJM2360_A_APP_J.pdf
このIC,内蔵のパワートランジスタがあり,外部にタイミングキャパシタをつけることによりスイッチングの周期を決定できるスグレモノ。
アプリケーションノートをよく読んで素子値の選定と設計をしましょう。
・ アプリケーションノート小電力昇圧回路例
今回の設計条件は,
Vin = 5V
Vo = 12V
Io = 100mA
η = 70%
Ta = 25℃
で行きます。
■ 発振周波数の設定
ここではアプリケーションノートそのままでタイミングキャパシタは680pFを選びました。データシートのタイミングキャパシタ特性例からパラメータを読み取る。
タイミングキャパシタ : Ct = 680 pF
発振周波数 : fosc = 42 kHz
スイッチON時間 : ton = 17.7 us
スイッチOFF時間 : toff = 4.3 us
少しずれていても性能は変わらないのかも。
■ インダクタンスの設計
インダクタに蓄えられる電力は出力電力と同じです!
Vsat は内蔵のトランジスタのコレクタとエミッタの飽和電圧です。0.7Vです。
インダクタンスLの値は100uH以上のものを使用します。今回は100uHを使いました。
■ ピーク電流の計算
Mode 1 のスイッチオンのとき,インダクタに流れる電流は一次関数的に増加します。
なのでピーク電流は次の式で求まります。
とピーク電流が得られるので定格電流がこれより大きい,100uHのインダクタを選んでみる。
例えば LHL13NB101K (100uH / 2.0A / 0.12Ω)
僕は手持ちの部品を使いました。(後で致命的なミスがあることが分かる。)
■ コレクタ抵抗Rcの設計
Rcは,内蔵パワートランジスタの動作電位の確保と大電流防止のためだそうです。
Rc は入力電圧、NJM2360/60A 内蔵パワートランジスタ Q1 の VBE とベース-エミッタ間抵抗(158Ω)、Q2 の飽和電圧、電流増幅率、ピーク電流で求まります。
今回は330Ωを使いました。
■検出抵抗R1およびR2の設計
アプリケーションノートから抜粋しますね。
「NJM2360/60A には基準電圧 VREF=1.25Vとその電圧を比較するコンパレータが含まれています。このコン パレータ反転入力(5ピン)に出力電圧検出抵抗 R1・R2 で分圧した電圧を印加することにより出力電圧を決定します。」
Q1のベース電流の最大値は400nAだそうです。電流増幅率を200にしておいて,
適当な値の抵抗を使いずらいので半固定抵抗200kΩでR1とR2を割り振ることにしました。
■Rsc(過電流検出抵抗の設計)
過電流検出回路は過電流に対するパワートランジスタとインダクタンスを保護する回路です。次の式で求まります。
1Ω抵抗を5個並列につなげましょう。(この抵抗値で性能は変わらないと考え,2個並列で0.5Ωにしました。)
■平滑容量Coの設計
アプリケーションノートでは470uFです。そのままの値を使ってみました。
■ダイオードの選定
Ipk = 750mAを許容する定格電流のダイオードを選びました。
やっと終わった。
回路図
水魚堂さんのBSch3Vでざっと書いてみました。
完成
よいしょ pic.twitter.com/fw6S4bkOEZ
— まなお (@LookForManao) 2016年11月15日
結果・反省
結構きれいに光る。インテリアとして良い。ラボに置いていると誰かさわりに来てくれる。ちょっと嬉しかったりする。しかしインダクタを触ってみるとめちゃくちゃ熱い。インダクタのデータシートをよくよく見てみると許容電流値165mAとある。こりゃあかん。燃えないことを祈って,あとでインダクタ取り替えてみようと思います。
パワーエレクトロニクスという学問分野の,昇圧チョッパについて理解が深まったと思います。
というか記事の長さがとんでもないことになってしまいました。反省。
昇圧チョッパの回路方程式とかSpiceのシミュレーションとかまだ書きたいことはあるんですが次回以降で。
最後に,ここまで読んでくださってありがとうございました。